帰還と貢献

帰還したプロダクト開発経験を形式知に変える:普遍的教訓の抽出と組織貢献への繋げ方

Tags: 経験知, 形式知化, リーダーシップ, 組織貢献, プロダクト開発

経験からの「帰還」を価値ある「貢献」へ

日々のプロダクト開発業務に深く携わる中で、私たちは数え切れないほどの経験を積み重ねています。成功もあれば、予期せぬ失敗もあります。これらの経験は、貴重な学びの宝庫です。しかし、多忙な業務に追われる中で、その学びが個人的な感覚や記憶の中に留まり、十分に活かしきれていないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ヒーローズジャーニーにおいて、「帰還」フェーズは、冒険を通じて得た「秘薬」や「宝」を持ち帰り、元の世界をより良くするために活用する重要な段階です。ビジネスにおける私たちの経験も、まさにこの「宝」に他なりません。いかにして、この個人的な「宝」、すなわち「経験知」を、組織全体の資産である「形式知」へと昇華させ、多忙な中でも効率的に組織や社会への「貢献」、そして自己のリーダーシップ強化に繋げていくか。この記事では、その具体的なアプローチについて考えていきます。

経験知を形式知化する意義

経験知とは、個人の体験を通じて体得される、言語化しにくい知識やスキル、直感などを指します。一方、形式知とは、マニュアルやデータ、論文のように、言葉や図などで表現され、他者と共有可能な知識のことです。

経験知を形式知化することには、多くのメリットがあります。

経験知を形式知化するための具体的なステップ

多忙なITリーダーが、自身のプロダクト開発経験から普遍的な教訓を抽出し、形式知化するための具体的なステップを以下に示します。

1. 経験の棚卸しと「宝」の特定

まず、過去のプロジェクトや開発において、特に印象的だった成功体験や失敗体験を具体的に書き出してみましょう。箇条書きでも構いません。重要なのは、感情的な側面だけでなく、何が起こったのか、なぜそうなったのか、その結果どうなったのか、という事実に基づいた記述を心がけることです。

この段階では、まだ形式知化を意識しすぎず、まずは「宝」となる可能性のある経験を特定することが重要です。

2. 普遍的教訓の抽出

次に、棚卸しした個別の経験から、より汎用的で普遍的な教訓や原則を抽出します。なぜ成功したのか?なぜ失敗したのか?そこから何を学ぶべきか?を深掘りします。このプロセスは、「5 Whys」(なぜを5回繰り返す)のような思考法が役立つことがあります。

単なる技術的な問題だけでなく、チームワーク、コミュニケーション、意思決定プロセス、リスク管理、顧客理解など、様々な側面から教訓を引き出すことを意識します。これは、特定の技術に依存しない、リーダーシップに関わる普遍的な洞察につながります。

3. 構造化と言語化

抽出した普遍的な教訓を、他者が理解しやすいように構造化し、明確な言葉で表現します。以下の要素を含めると、より伝わりやすくなります。

4. 共有可能な形式への落とし込み

最後に、構造化・言語化された形式知を、実際に組織内で共有するための形式に整えます。多忙な中でも取り組みやすい、いくつかの形式が考えられます。

多忙な中でも形式知化を進めるコツ

IT部門のリーダーは非常に多忙です。その中で形式知化の時間を捻出するには、工夫が必要です。

形式知化を通じた貢献とリーダーシップ強化

形式知化は、単に知識を整理するだけでなく、組織や社会への貢献、そして自身のリーダーシップ強化に直結する行為です。

まとめ:経験を「宝」に変え、循環させる

プロダクト開発の現場で積み重ねた経験は、あなたにとってかけがえのない「宝」です。この「宝」を個人の記憶に留めるだけでなく、意識的に形式知化し、組織や社会と共有することで、その価値は何倍にも膨れ上がります。

忙しい日々の中で新たな活動を始めるのは容易ではありません。しかし、ご紹介したような短い時間での取り組みや、既存のフレームワーク活用など、小さな一歩から始めることは可能です。あなたの経験から抽出された普遍的な教訓は、組織の成長を加速させ、共に働く仲間の道を照らし、そしてあなた自身のリーダーシップをより確固たるものにしていくでしょう。

ぜひ今日から、自身の経験を「帰還」させ、形式知という形に変えて「貢献」に繋げる取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。それが、サイト「帰還と貢献」が目指す、経験の価値を循環させるリーダーシップのあり方です。